ビルの壁面から縦に長く垂らす大型の幕——それが懸垂幕(けんすいまく)です。イベント告知やセール、開店・周年の訴求に大きなインパクトを出せる一方、高所・大面積ゆえの風対策・落下対策・許可を知らずに掲げると、破れ・事故・是正指導につながります。この記事では、短期販促ののぼり・横断幕(のぼり・横断幕ガイド)とは切り分け、縦長・ビル壁面の大型幕としての懸垂幕を、素材・掲出・風対策・法令・費用まで発注者目線でまとめます。種類全体は看板の種類まるわかりガイドをどうぞ。
懸垂幕とは:ビル壁面に縦長で掲げる大型の幕
懸垂幕は、建物の壁面や屋上から縦方向に垂らす大型の幕です。上下にバトン(棒)やロープを通して張り、遠くからでも読める大きな告知面をつくります。ビルの正面を丸ごと使えるので、短期間で強く訴求したいイベント・セール・キャンペーンに向きます。素材は多くがターポリンなどの丈夫な生地で、印刷で自由なデザインを載せられます。
のぼり旗や横型の横断幕とは、向き・掲出場所・サイズ感が異なります。手軽な短期販促はのぼり・横断幕(のぼり・横断幕ガイド)、ビル壁面の大型・縦長は懸垂幕、と使い分けると考えやすいです。
懸垂幕・垂れ幕・横断幕・タペストリーの違い【用語整理】
呼び名が紛らわしいので、まず整理します(明確な定義があるわけではなく、慣習的な使い分けです)。
| 呼称 | 向き・掲出 | イメージ |
|---|---|---|
| 懸垂幕 | 縦長。ビル壁面・屋上から垂らす大型 | ビル正面の大きな告知 |
| 垂れ幕 | 縦長。懸垂幕とほぼ同義で使われる | 「祝・優勝」などの縦幕 |
| 横断幕 | 横長。壁・フェンス・歩道橋などに横に張る | 沿道・会場の横長幕(→のぼり記事) |
| タペストリー | 上辺に棒を通し吊る小〜中型 | 店内・店頭の装飾的な幕 |
| バナー | 縦横さまざま。旗・幕全般の総称的に使う | 用途で呼び分け |
この記事は縦長・大型の懸垂幕(垂れ幕)に軸足を置きます。横断幕やのぼりはのぼり・横断幕ガイドを参照してください。
素材と選び方:ターポリン・メッシュ・トロマット
懸垂幕の耐久と風の受け方は、生地で大きく変わります。
| 素材 | 特徴 | 屋外の目安 |
|---|---|---|
| ターポリン | ビニール系で丈夫・防水。屋外大型の定番。防炎仕様の製品もある(防炎の要否・防炎品かは要確認) | おおむね2〜3年(掲出条件による) |
| メッシュターポリン | 網目で風を通す。高所・風の強い場所向き | 風対策重視の屋外向き |
| トロマット | 布系で発色がきれい・軽い。短期・イベント向き | 屋外は数週間〜3か月程度が目安 |
ビル壁面のような高所・風の当たる場所では、風を逃がすメッシュターポリンが有力です。長期掲出で耐久を求めるならターポリン、短期のきれいな発色ならトロマット、と用途で選びます。防火が求められる場面では防炎生地・防炎加工も検討します(後述)。
屋外・高所の必須知識:風対策
大きな幕は「帆」と同じで、風を受けると大きな力がかかります。破れ・脱落・事故を防ぐ風対策は必須です。
- メッシュ生地で風を逃がす:面で受け止めず、網目から風を通す。高所ほど効果的。
- ハトメ(鳩目)で固定:周囲にハトメを打ち、ロープで縛る。ハトメは約50cm間隔が一つの目安(鳩目は外径18mm・内径10mm程度が一般的)。
- 周囲ロープの縫い込み:幕の縁にロープを縫い込むと強度が上がり、力が一点に集中しにくくなります。
- 風穴(ベンチレーション):面に穴やスリットを設けて風を抜く加工もあります。
- 強風・台風時の一時撤去:それでも荒天時は下ろすのが安全。運用ルールを決めておきます。
※ 風穴の径・個数やメッシュの風通過率などの具体仕様は、生地・サイズ・掲出条件で変わります。発注時に看板屋へ「掲出場所と高さ」を伝え、適切な加工を相談してください。
掲出方法:バトン・パイプ・ロープ・専用金具
懸垂幕をどう張るかは、建物側の条件で決まります。
- バトン式・パイプ袋加工:上下に棒を通して張る。既存の懸垂幕装置がある建物では最もスムーズ。
- ロープ吊り:上下・四隅をロープで固定。吊具ロープは径8mm程度が使われます。
- 専用金具・アンカー:壁面や屋上にアンカーを打って固定。建物への穴あけを伴うため、後述の許可が要ります。
- 既存の懸垂幕装置:オフィスビル等には掲出用のレール・装置が備わっていることも。あれば活用が安全・低コストです。
ビル壁面・屋上に掲げるときの設置と落下対策
高所への設置は、作業そのものが危険です。発注者が見落としがちな論点を押さえましょう。
- 高所作業車・ゴンドラ:設置・撤去に必要で、これが費用の大きな部分を占めます。「幕は安いのに総額が高い」のは、たいていここです。
- 落下対策:固定の緩み・生地の劣化は落下事故に直結します。定期的な点検と、劣化したら早めの交換を。
- 掲出中の安全管理:万一の落下が人・車に及べば、設置者・管理者の責任が問われ得ます。
看板全般の点検の考え方は看板の点検・メンテナンスもあわせてご覧ください。
知っておくべき法令①:屋外広告物条例(許可・掲出期間・面積)
懸垂幕・垂れ幕は、多くの場合屋外広告物にあたり、自治体の屋外広告物条例による許可が必要になることがあります。特に幕類は、掲出できる期間が短めに区切られている点に注意です(立看板等が長期なのに対し、幕は1か月程度など短い運用の自治体があります)。面積の上限が定められている地域もあります。
※ 許可の要否・掲出できる期間・面積の上限は自治体によって大きく異なります。数値は例示で断定できないため、掲出前に所轄(都市計画課・景観課など)で必ず確認してください。基本は屋外広告物条例の基礎を参照。
知っておくべき法令②:消防法の防炎
掲げる建物・場所によっては、防炎の幕が求められます。一般に、高さ31mを超える高層建築物、地下街、劇場・旅館・病院などの防火対象物や工事現場の幕などが対象になり得ます。ターポリンは素材として防炎性を持つものが多いですが、防炎ラベル(表示)が必要かは所轄消防で確認するのが確実です。
賃貸ビル壁面の許可と、掲出期間・色あせ・耐用年数
自治体の許可(条例)とは別に、建物のオーナー・管理会社の承諾という現実的なハードルがあります。賃貸ビルの壁面・屋上を使うなら、掲出の可否・固定方法(穴あけの可否)・原状回復を事前に取り決めておきましょう。
耐用年数の目安は、屋外のターポリンで概ね2〜3年(掲出向きや直射日光で前後)、トロマットの屋外は数週間〜3か月程度。色あせが進むと「放置された幕」に見えてしまうため、掲出期間を決めて計画的に張り替えるのがきれいに見せるコツです。
費用の目安と発注前チェックリスト
費用は「本体」「加工(ハトメ・ロープ・防炎など)」「設置費(高所作業)」の3層で考えると総額が見えます。
| サイズ(本体) | 目安 |
|---|---|
| 小型(約1m×2m) | 10,000〜20,000円前後 |
| 中型(約1m×3m) | 15,000〜30,000円前後 |
| 大型(約2m×5m) | 40,000〜80,000円前後 |
※ 上記は本体(印刷・生地)の目安です。ハトメ・周囲ロープ・防炎などの加工費、そして高所作業車・ゴンドラを使う設置費は別途で、現場条件により大きく変わります(設置費が本体を上回ることもあります)。正確な費用は看板屋の見積りでご確認ください。
発注前チェックリスト
- 掲出場所の高さ・風の当たり方を伝えたか(=メッシュ要否・加工の判断材料)
- 屋外広告物条例の許可・掲出期間・面積を所轄で確認したか
- 防炎が必要な建物・場所か(所轄消防で確認)
- 賃貸ならオーナー・管理会社の承諾(穴あけ・原状回復)を得たか
- 設置・撤去の高所作業(費用・安全)を見積りに含めたか
よくある質問
Q. 懸垂幕とタペストリーは何が違う?
A. 明確な定義差はありませんが、縦長で建物上部から吊る大型が「懸垂幕(垂れ幕)」、上辺に棒を通して店内などに飾る小〜中型が「タペストリー」と呼ばれる慣習です。
Q. ビルの壁面に懸垂幕を出すのに許可はいる?
A. 屋外広告物条例による自治体の許可が要ることがあり、賃貸なら物件オーナー・管理会社の承諾も必要です。所轄(都市計画課・景観課など)で確認してください。
Q. 屋外・高所で風に破れないためには?
A. メッシュターポリンで風を逃がし、約50cm間隔のハトメ+周囲ロープ縫い込み、必要に応じて風穴加工を。荒天時は一時撤去が安全です。
Q. 防炎の幕にしないといけないのはどんな場合?
A. 高さ31m超の高層建築物、地下街、劇場・病院などの防火対象物、工事現場などが対象になり得ます。ターポリンは防炎性を持つ素材が多いですが、防炎ラベルの要否は所轄消防で確認を。
Q. 懸垂幕はどのくらいの期間掲げられる?費用は?
A. 素材寿命は屋外ターポリンで概ね2〜3年ですが、条例上の許可掲出期間は別に短く区切られることがあります。本体は中型で15,000〜30,000円程度、別途で設置費(高所作業)が要ります。
まとめ:懸垂幕は「素材・風対策・設置費・許可」で決める
懸垂幕は、ビル壁面を丸ごと使える強い訴求力が魅力ですが、①用途に合う素材(高所はメッシュ)②発注仕様レベルの風対策 ③高所作業を含む設置費 ④屋外広告物条例と掲出期間 ⑤消防法の防炎 ⑥賃貸ビルのオーナー承諾を押さえてはじめて安全に活きます。短期販促ののぼり・横断幕はのぼり・横断幕ガイド、種類全体は看板の種類まるわかりガイド、地域の看板屋に相談したい方は都道府県から看板屋をさがすからどうぞ。
関連ガイド:看板の種類ガイド/看板の法令ガイド/看板づくりガイド(総合)
※ 本記事は一般的な情報の解説です。費用・耐用年数は生地・サイズ・掲出条件で異なり、屋外広告物条例の許可・掲出期間・面積、消防法の防炎の要否は所轄・自治体で運用が違います。高所作業は安全確保が必要です。実際の掲出前に、各自治体・所轄消防・建物管理者および各社の最新情報を必ずご確認ください。



